崖
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僕は君を許さない。
君は裏切り者。
僕というものがありながら、浮気をした。
知っているんだ、 あの男と会っていたこと。
何を考えていたのか、何をしたのか、僕は知らない。
でも裏切りは罪、罰は絶対だ。
僕がどれだけ君を好きか、 君を愛しているか、 夜通し囁いたのに。
罰は絶対だ。
僕は君とこの場所にいる。
少し危険な所が良い、と君は言った。
こんな切り立った崖の何が、 君の心を捉えたのか…
僕はついぞわからなかった。
そっと実行しよう。
痛みを与えるのは本意じゃない。
数瞬後にどれほどの痛みが 君を打ちのめすかわからないけれど。
それは僕のせいじゃない…君の罪のせい。
「残念。曇りだね」
君が呟く。
晴れてたら綺麗なのに、 と軽くうつむいた。
「そうだね」
僕は答える。
しかし脳を経由しない、 脊椎反射の相槌。
「あのね、わたしね…」
君は突然表情を変えた。
真剣な眼差しが僕の網膜を焼いた。
何を言うつもりだろう?
別れ?
その思考が大脳皮質を焦がす。
ダメだ、言わせてはダメだ。
「いざとなると怖いな…」
惑い、僕を外れる視線。
それをきっかけに、僕は動く。
半歩、一歩。
君を挟んで崖に向かう。
「友達にも相談してね、決めたの」
もう君の言葉は僕の鼓膜を震えさせるだけ。
脳はただ一つのことに集中しはじめていた。
そっと、そっと押そう。
君を永遠に僕のものにするために。
せめて散りゆく様を見ないように、 うつむいて…押そう。
「わたしと…」
半歩…逝け!
「結婚して!」
『何?』
足がもつれた。
予想外の言葉に。
刹那、僕は虚空に投げ出された。
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